介護業界で働く前に読むブログ

介護に正解はない、あるのは関係者各位の合意のみ

【告白】私が起こしてきた介護事故と、懺悔と、その再発防止

交通事故の車

こんにちは、介護福祉士のまちかです。

夏になり、新人さんらもそろそろ現場に慣れてきた頃ではないでしょうか。

そんな折、特に気をつけたいのが介護の事故。

新人に限らずですけど、慣れてくるとケアの一つひとつが、惰性とまでは言いませんが特段の注意を払わなくても体が自然に動いて、まるで小人さんがやってくれたのかのように勝手に出来てしまうものです。

飲み込みの早い優秀な人ほど、効率重視で流れ作業的に仕事をしがちです。それで上手く回って行けばいいんでしょうが、事故やクレームなどには注意していただきたい。

介護は言わずもがな、人の命を預かる仕事です。

 

今回は、私が過去に起こしてきた介護事故のいくつかを、恥を忍んでご紹介したいと思います。皆さんには、それを見て笑ってバカにして参考にして、今後のために役立ててもらいたいです。

 

それでは行ってみましょう、題して「俺の屍を越えてゆけ」介護版。(いや決して、誰も死んではいませんが気持ち的に)

家族の目の前で入居者を落とす事件

入社して一週間目のことです。

当時、未経験として入社していた私は、「とにかく人がいないから」とすぐに現場投入され、不安ながらも一人立ちさせられていました。

その日、館内を歩いていると、入居者の家族らしきご婦人から「旦那が横になりたいから移してくれ」と頼まれ、一緒に部屋へ行き、車イスからの移乗を行いました。

多分、人生で初めてか二度目ぐらいの移乗だったと思います。

この時点で、誰か先輩職員でも呼べば大事にはならなかったんでしょうが、当時の私には、正直、高齢者をベッドに移す作業が、それほど技術のいる行為だとは思っていませんでした。(今でも介護を知らない人は、そう思っているはず)

一人で行い、案の定失敗しました。入居者の男性と一緒に、床に転がってしまったのです。

ご婦人がケアコールを押してくれ、先輩職員を呼んでもらい、無様な状態を披露してしまったのでした。

 

後から知ったのですが、入居者の男性は多発性脳梗塞の既往歴があり、左麻痺、要介護度は4程度。移乗は全介助がベスト対応だったそうですが、ケアの統一はされておらず、現場介護士も各自が自由なやり方で行っていたようです。

よくよく考えてみれば、もしつかまり立ちが充分に出来て、手を添える程度の介助で事足りるのであれば、ご婦人もわざわざ介護士を呼んだりはしません。

自分が「何が出来て、何が出来ない」かすらも分からない状態。

そんな介護士に一か八かの介助をやらせるなど、本来はあってはならない状態なのですが、私も含め、教える職員自体も当時は介護経験がそれほどあった訳ではなく、ただ上司から言われたことを新人にも行っていたのだと思います。

 

最初の一週間、確かに先輩職員に付いてケアを見て回りはしますが、一度見ただけで完璧に出来る人など、どれほどいるでしょうか?

当時の現場の雰囲気としては、「忙しくて人がいない中、一週間も先輩に付いて回ったんだからもう覚えたでしょ」的なところも、確かにあったと思います。

数ヵ月が経ってからですが、徐々にOJT制度が確立していき、今では一定のレベルまで先輩が教えるようになっていきました。

使用済みパッドが甘くて美味しい事件

夜勤をしていた時のことです。

深夜0時、私は各部屋のおむつ交換をしていました。一人の入居者を終え、次の入居者といった具合に、交換したおむつ・パッド類を各部屋の前に置いて回っていました。

全部の部屋でおむつ交換をする訳ではありませんが、それでも巡視も含め、グルッとフロアを一周するのに約一時間ぐらいはかかるでしょうか。

最後にまとめてゴミを捨てるため、廊下には点々と丸めたおむつ、新聞紙、ビニール袋などが置いてありました。全ての交換が終わり、始めに行ったおむつ類のゴミを集めようとした瞬間、一つ無いことに気が付きました。

別のフロアでも同僚が同じ作業をしていたので、早く仕事が終わり、気を利かせて持って行った可能性も無くはないんですが、、、事実は壮絶なほど違っていました。

 

入居者が部屋から這い出てきて、 自身のパッドをむさぼり食べていたのです。

おそらく、おむつ交換した際に目が覚めてしまい、空腹に思ったのでしょう。糖尿を患っていた入居者だったこともあり、食事制限認知症も相まっての悲劇です。

自身の尿を吸ったパッドが、よっぽどご馳走に見えたのだと思います。確かに甘かったのだと思います。中身がむき出しになったポリマーは、尿と唾液でグズグズになっていて、入居者の口や鼻にまとわり付いていました。

最悪、窒息の恐れもあるなと感じました。

すぐに手でグズグズになったポリマーを口から掻き出して、近くにあったタオルで見える範囲を拭き取ります。その後、ナース室から吸引機を持ってきて、何とか詰まらない程度に取り除きました。

自身の尿を食べる姿は、今も脳裏に焼き付いています。

幸い、その後は何もなかったかのように寝ていました。結局大事にならずに済みましたが、それ以降、その入居者の使用済みパッドは、手の届く所に置かないよう再発防止が取られたのでした。

爪と一緒に指まで切ってしまう事件

要介護5の入居者。胃ろう状態で、全てに置いて全介助。自発的に動いたり声を出したりすることもない人の入浴介助の話です。

当時、私は夜勤明け、当日欠勤者が出たため残業で数時間だけですが、同僚のケアを手伝っていた時のことです。

今なら、もうこの時点で既におかしい、なりふり構わず断って帰る、といった行動にも出られますが、あの頃は日常的に夜勤明けの職員も現場を手伝っていました。

もっと言えば、それが現場ためだとさえ勘違いして手伝っていた節もありました。

 

入浴後の、軟らかくなった爪を、パチン、パチンとやっていた時、悲劇は起こります。手元が狂ったのか、前日の夜勤の疲れが急に出てきたせいか、もう当時の詳細は覚えていませんが、最後に足の小指を切った時です。

指の先端まで切ってしまいました。

 

流石に要介護5とはいえ、かなり痛かっのか、それまで無反応だった入居者もビクッと大きく揺れ、「オオオアァァ」と声にならない声を上げていました。

後にも先にも、この方の声を聞いたのはこの瞬間だけです。

すぐに看護師を呼び、ガーゼと軟膏で処置をしてもらいましたが、お風呂上がりで血行が良くなっているせいか、出血が止まらない止まらない。患部はそれど大きくはないのですが、止血するまで押さえていた時間が永遠にも思えました。

 

一度引き受けてしまった以上、「夜勤明けだから仕方ない」は言い訳です。周囲の目など気にせず、思い切って帰るべきだったのです。

それ以降、私は欠勤者が出ようが、入居者の入浴回数が減ろうが、お構いなしに自分の仕事が終われば帰ります。

もちろん後ろ髪を引かれる思いはありますが、人員管理の出来ない経営の責任と考え、夜勤明けなどには絶対に働きませんし、体調が悪ければ気兼ねなく休みます。

無理に働いて介護士の寿命を削るより、自らコントロールしたほうが最終的には高齢者のために長く貢献できるとは思いませんか?

 

今の事業所では、夜勤明けで入浴介助や掃除等をやらせる機会など滅多に無くなりましたが、まだまだ現場に無理を強いらなければ回らない所は多いと考えます。

優しい介護士ほど自己犠牲をして、最後には身を滅ぼす。燃え尽き症候群にならないよう、セルフコントロールを意識しながら介護士としての人生を送っていきたいものです。

事故報告書は反省文ではない

常識的な事業所であれば、普通は転倒などがあった際、事故報告書を記入すると思います。また、事業所も「介護保険事業者事故報告書」ってのを市町村に提出しているはずです。

ちなみに、行政に届けられている事故報告は、8割が転倒や転落などについてらしいです。

実際に働いて思うのが、事故レベルも何段階かあって、例えば薬を落としたり、入居者が他の人の部屋に入ったりなどは、日常茶飯事で「ヒヤリ・ハット」で済ませ、いちいち行政には報告していないんじゃないでしょうか。

  1. 連絡用メモ
  2. ヒヤリ・ハット
  3. 事後報告書

現場の人間が日常的に書くのは、以上の3点だと思います。

各用紙の記入項目やどこで線を引くかなどは、事業所によって違うとは思いますが、厳しくしたところで負担になるだけです。私は適当なところで手を打ち、現場が上手く回るように采配を振るのも、管理者の務めだと考えます。

 

あと、よくやりがちなのが報告書に「申しわけない」とか、「以後、気をつけます」といった謝罪の気持ち書く人がいますが、本当にそれは止めていただきたい。

気持ちは分かりますが、必要なのは今後起きないようにするにはどうしたらいいか?

この一点のみです。

 

別に罰ゲームで報告書を書くのではありません。あなたが事故を起こすということは、他の人も同様に起こす可能性があった訳で、それを今後やらないようにするには、どうしたらいいか?

もう一度言います、この一点のみでお願いします。

当事者であるあなたが一番詳しいはずなので、入居者・利用者の状況、それらの詳細を5W1Hで記入だけすれば充分です。気持ちなど、むしろ読んでいて余計です。

 

 

とまあ、これらが私の事故報告です。

別に事故を起こさなくても、自分が見つけたせいで書かなくちゃいけない、といったケースも多いと思います。ほとんどは、通常業務が終わった後に居残って、皆さん慣れない報告書を書いてくれています。

事業所としても、そういったトライ&エラーの記録は財産になりますので、しっかりと残業代を払い、情報収集をして、今後に役立てていってほしいものです。

以上、おわり。