介護職は罰ゲームなのか? | 損保ジャパン、余った従業員を介護士に
今週、このようなニュースが流れました。
損保ジャパン 4000人削減→ 介護に配置転換 - Togetter
これを受け、我らが介護業界の面々は「介護はリストラの受け皿じゃない!」と怒り、一方で、コンサルタント関係からは「なるほど!上手いリストラ方法があったもんだ」と賛否両論の声がTwitterやSNSなどで聞かれました。
今回はあまり面白くない、ニュース解説的な記事です(笑)
そもそも損保ジャパンってなにさ?
損害保険ジャパン日本興亜とは、日本三大メガ損保の一つ。保険業を主軸に、数年前からは積極的に介護事業にも手を伸ばし、現在ではニチイ学館に次ぐ介護業界 第2位になった超大手のグループ企業です。
旧メッセージ、旧ワタミの介護、旧ジャパンケアサービスなど、虐待や殺人事件、訴訟問題のような不祥事で世間を賑わせ、企業継続が難しくなった会社を丸ごと買い取った経緯があります。
現在ではSOMPOホールディングス株式会社の介護事業部門、「SOMPOケア」がそれらイワクツキの施設を一手に引き受け、現在も運営を続けています。
四季報2019版によれば、グループ会社のスペックは以下の通りです。
「SOMPOホールディングス株式会社」
東証一部 証券コード8630
連結子会社 49387人
平均年齢 43.4才
平均年収 1152万円
5万人も社員を抱える大会社で、その内の4000人が介護事業のほうに移転してくる予定らしいですが、まあ出向や移動の辞令をもらっても、半分以上の社員は「介護とかって無理!」とか言って辞めちゃうんじゃないでしょうか。
私の勤めている会社ですら、介護を本業としているのに、本部の背広組は介護をやりたがらない始末ですから(怒)
保険だけでなく、銀行、証券など、金融はもう
ご存知でしょうが、日本の会社は米国とは違い、 ITで効率化したため雇用者がいらなくなったからといって簡単にクビにはできません。
辞めないまでも別会社に移動すれば、給料水準などは出向先に合わせられますし、年収1000万円ブンも働いてないとみなされた社員は、軒並み介護に回されちゃうでしょう。
御愁傷様です。ザマァです。
そしてようこそ最果ての地へ、です。
おそらくこの流れは続き、今後も金融関係を中心に増えてくるでしょう。そもそも金融は他の業界に寄生して利益を上げてるくせに、昔から給料水準が高過ぎるんです。
今回のケースほど露骨ではないにしろ、ITを活用した人員削減の方針は既に東京三菱UFJも発表してますし、以前にも大和証券が介護会社を買収したとのニュースが出ていました。
水面下では着々と、合法的なリストラが進んでいることでしょう。
今後、フィンテックやブロックチェーン技術などが本格化すれば、一部の技術者以外は定年を待たずにお払い箱になることは必至です。
一見して介護とは何の関係もないような他業種が、なぜ介護に手を出すのか?
慈善事業だけで買収していない、カラクリの正体がこれでした。
介護が罰ゲームだと思われているようでは
ただし、そういった経緯で介護業界へ人材が流入したからといって、実際の職場環境や人材不足が解決するかどうかは別の話だと思います。
業界歴が長い人は覚えているかと思いますが、2000年代終盤に建設業が大量に参入してきた時期がありました。これは国が公共事業を縮小させたため、仕事のなくなった建設業に介護をやらせようといった政府の方針からです。
介護事業に参入し、特養など箱モノを作るのに行政が助成金を出していました。
その結果はどうでしょうか?
人材不足や雇用環境、介護職員の処遇は改善しましたでしょうか?
確かに施設系は一時期より増えたかもしれません。ですが人材不足は改善されず、今ではオープンしても空き部屋が目立つ施設が多くなってしまいました。
結局、介護が罰ゲームのような仕事だと世間から思われている状態では、 働く者にとってはいつまで経っても不遇の時代は続くのです。
じゃあ、一体どうしたら良いのか?
介護職をしていれば最低限、介護福祉士の資格は取る。介護保険の上に成り立っている仕事なのだから、出来ればケアマネ資格にも挑戦してみる。
そして介護保険サービスに留まらず、得意なことがあれば+α、利用者に役立つサービスをしていき介護を軸として領域を広げていくのです。
そうやって一つひとつ出来ることから、外部や上部に対してアプローチして、介護の社会的地位を上げてゆくしかないと思います。
さいごに
昔から介護業界は不景気になると人材が集まり、景気が良くなると人が去っていく業界と言われてきました。
私もリーマンショックの余波でこの介護に足を踏み入れてしまったくちなので、誰よりも理解はしています。
業界のイメージを一新するため、「任侠ヘルパー」のようにジャニーズ系の俳優が定期的にドラマなんかやれば、案外、簡単に改革できるんじゃないかと考えています。
後輩を教えていて思うのは、最近の若い子は必ずしも「金銭的な報酬が第一」と、考える子ばかりではないといったことです。
素直で、純粋に人のためになる仕事をしたいと、立派な志しを持った若者も多いです。
彼ら彼女らを落胆させないよう、既にこの道を歩いている皆さんで希望ある業界にしていきたいものです。
以上、おわり。